なぜ悪いおみくじを木に結ぶのか:その意味とは

悪いおみくじを木に結ぶ理由をご存じですか?その行為には「悪運を封じ、心を整える」という深い意味が隠れています。神社の伝統と日本人の祈りのかたちを優しく解説します。

投稿日: 2025/10/8

なぜ悪いおみくじを木に結ぶのか:その意味とは

神社でお参りをしたあと、多くの人が手にする「おみくじ」。
その結果に一喜一憂した経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
大吉を引けば嬉しくなり、凶を引けば少し落ち込む——。
そして、悪い結果のおみくじを木の枝や結び所に結んで帰る光景を目にしたことがある人も多いはずです。

では、なぜ人々は「悪いおみくじ」を木に結ぶのでしょうか?
その行為には、古くから伝わる深い意味と、心の清めの儀式が隠されています。


1. 「結ぶ」に込められた日本人の心

日本語の「結ぶ」という言葉には、「縁を結ぶ」「契りを結ぶ」など、多くの良い意味があります。
古来より「結ぶ」という行為は、ものごとを良い方向へと導く祈りの象徴でした。

おみくじを木に結ぶことも、その延長線上にあります。
悪い運勢を「結ぶ」ことで、その不運を木に留め、自分から離す。
そして同時に、「良いご縁」や「幸運」を木に呼び込むという意味もあるのです。

神社に植えられた木は、神の御心が宿る「神木(しんぼく)」とされることもあります。
その神聖な木におみくじを結ぶことで、神様に願いを託し、不運を清めてもらうという日本人特有の信仰が生まれました。


2. 悪い運勢を「封じる」ための儀式

おみくじを木に結ぶもう一つの理由は、「悪運を封じる」という意味です。
昔の人々は、言葉や文字には力が宿ると信じていました。
おみくじに書かれた言葉は、単なる占い結果ではなく、「言霊(ことだま)」そのもの。
だからこそ、悪い言葉や凶運をそのまま持ち帰ることは、運を引きずることになると考えられていました。

そこで、神社にある木や縄に結びつけることで、その凶を神域に封じ込め、悪運を断ち切る。
この行為が、やがて全国に広まり、今では神社の風景の一部として定着したのです。

また、結ぶ場所が専用の「おみくじ結び所」や「おみくじ掛け」として整備されているのも、
神職による清めや祈願のため。
つまり、ただの風習ではなく、神様に悪運を浄化してもらう正式な祈りの形なのです。


3. 「悪い結果」は、実はチャンスのサイン?

実は、「凶」や「末吉」などの悪いおみくじを引いたとしても、それが必ずしも不幸を意味するわけではありません。
神道の考え方では、「悪い結果」は「今、気をつけなさい」という神様からのメッセージとされています。

つまり、「今の行いを正せば、これから良い方向に向かう」という前向きな暗示でもあるのです。
そのため、悪い結果を結ぶことで、「これを教訓として、次はより良い運を引き寄せます」と
神様に誓う意味も込められています。

木に結ばれた無数のおみくじは、人々の「悪い運を断ち切りたい」「より良く生きたい」という祈りの象徴。
それはまるで、風に揺れる白い紙が、ひとつひとつの願いを天へと運んでいるかのようです。


4. 神社によって異なる結び方の意味

興味深いことに、結び方や結ぶ場所には地域や神社によって違いがあります。

例えば、伊勢神宮や出雲大社では、木ではなく専用の「おみくじ掛け」に結ぶのが一般的です。
これは、神聖な木を傷つけないための配慮でもあります。
一方、古くから続く地方の神社では、木の枝に直接結ぶことで、自然と一体になった祈りを表現します。

また、結び方にも意味があります。
「片結び」は縁を固く結ぶ、「蝶結び」は何度でも結び直せる縁を表すなど、
形一つにも日本人らしい繊細な心遣いが込められています。


5. おみくじを結ぶことが教えてくれる心の整え方

おみくじを結ぶという行為は、単に「悪運を捨てる」だけでなく、
「心を整理し、前を向く」ための小さな儀式でもあります。

悪い結果を引いたとき、人はつい落ち込みがちですが、
その気持ちを木に結び、風に任せて流すことで、自然と心が軽くなります。
それは、神社という「静かな場所」で自分の内面と向き合う、
いわば“心のデトックス”のような時間でもあるのです。

そして、新しい気持ちで帰るとき、
心のどこかに「きっと次は大丈夫」という小さな希望が芽生える。
この前向きな気持ちこそが、運を呼び戻す第一歩なのかもしれません。


6. まとめ:木に結ぶという「祈りのかたち」

おみくじを木に結ぶ行為には、「悪運を断ち切る」「願いを託す」「心を整える」といった
さまざまな意味が込められています。
それは単なる占いの結果への反応ではなく、
日本人が大切にしてきた「自然と神、そして人とのつながり」を象徴する美しい風習なのです。

風にそよぐ無数の白いおみくじを見つめるとき、
それはきっと、誰かの不安や願いが優しく揺れている姿なのかもしれません。
そして、あなたがもし次に悪いおみくじを引いたとしても、
その紙を木に結び、空を見上げてみてください。

きっとそこには、「新しい運」が風に乗って、あなたのもとへ戻ってくるはずです。

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占い師 さくら(運営者)

私は10年以上、日本の神社文化やおみくじの歴史を研究してきました。
全国各地の神社を参拝し、伝統的な占いの方法や意味を独自に分析しています。

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